当協会会長水谷章人より平井伯昌氏に記念の写真盾を贈呈

第6回 AJPS AWARD 2012

第6回AJPS AWARD 2012は会員及び実行委員からのノミネート者3名から選考作業に入りました。実行委員及びメール等による意見を総括し、審議いたしました末、AJPS AWARD 2012は平井伯昌氏に決定されました。

第6回 AJPS AWARD 2012「平井伯昌」氏に決定!

平井伯昌(ひらいのりまさ)■受賞理由
北島康介選手をはじめ多くのスイマーを育て上げ、数々の日本新記録および世界新記録の樹立、及び五輪での数々のメダル獲得に貢献して、指導者としての偉業と実績は現在の日本競泳界の発展に大きく貢献している。これまでの実績と更に進化しつづける「チーム平井」の活躍は水泳界にとどまらず、スポーツ界全体の発展に大いに期待がかかる。

平井伯昌(ひらいのりまさ)

1963年5月31日 東京都出身。東京スイミングセンター所属、東洋大学水泳部監督。2008年北京オリンピックでは競泳日本代表コーチに就任。東京スイミングセンターにて北島康介選手、中村礼子選手を指導し、メダリストに育て上げる。北京オリンピック以降は上田春佳選手、加藤ゆか選手、寺川綾選手を指導。2012年ロンドンオリンピックでは競泳日本代表ヘッドコーチを兼務し、その卓越した手腕により競泳陣のメダル数は戦後史上最多の11個(銀メダル3個・銅メダル8個)を獲得し、2004年アテネオリンピックの8個を抜く。


第6回 AJPS AWARD 2012 表彰式

2013年度(平成25年度)AJPS総会後の懇親会にて、AJPS AWARD2012の表彰式が開催され、受賞者の平井伯昌氏をお招きし、当協会会長より記念品の写真盾が手渡されました。

第6回 AJPS AWARD 2012 記念写真盾
第6回 AJPS AWARD 2012 記念写真盾
当協会会長水谷章人より平井伯昌氏に記念の写真盾を贈呈
当協会会長水谷章人より平井伯昌氏に記念の写真盾を贈呈

第6回 受賞者インタビュー 平井伯昌氏

AJPS AWARD 2012は、北島康介選手をはじめとする多くの世界的スイマーを指導し、数々の日本新記録および世界新記録の樹立や、五輪での多くのメダル獲得に貢献してきた平井伯昌氏(競泳日本代表ヘッドコーチ)に送られた。

平井伯昌氏平井氏は今年4月から、東洋大学法学部企業法学科准教授兼水泳部監督に就任。また、競泳日本代表ヘッドコーチとして日本水泳界を引っ張っている。

・・08年の北島選手に続く“師弟受賞”であり、選手側ではなく支える側の受賞です。
平井 日ごろから取材を受けてる方々の団体からの賞で、嬉しい気持ちです。ロンドン五輪が終わった後、選手にスポットが当たったのは非常に嬉しいことでしたが、僕の周囲の人、例えばJISS(国立スポーツ科学センター)のマルチサポートの運動生理学の方、あるいは動作分析の方などから、トレーニングをサポートする側がどのようにメダル獲得をサポートしたのかという掘り下げが少ないと言われたのです。

・・多くの的確なサポートがないと成功はありません。
平井 今回、たまたま私が表彰していただきましたけど、支える人を表彰すると言われることは報われる感じがして、非常に嬉しいという気持ちがあります。支える側の代表でもあるという気持ちもあります。

・・オリンピックは、00年シドニー五輪が最初でしたか?
平井 96年アトランタ五輪は見に行っただけですね。

・・シドニーから04年アテネ五輪、08年北京五輪、12年ロンドン五輪。4大会を経て、指導者としても着実にご自身もステップアップしているとお感じなのではないでしょうか。
平井 指導者には、指導者としての旬の時期というのもあると思います。例えば選手というのは体力的なこともあって、活躍できる期間というのが限られてると思うのですが、指導者は、例えば20代なりの指導だったり、30代なりの指導だったり、40、50代なりの指導というのがあります。コーチとして自分のスタイルを貫くのは大切ですが、対象の選手や、自分の立場や経験でやり方を変えていけることがあると思うのです。

ですから指導者として活躍できる年月はすごく長い。私は今年で50歳になります。進化できるのかどうかわかりませんが、時代のニーズに応えるということなら、頭を柔軟にしていればできると思います。

私としては、シドニー五輪からロンドン五輪までで半分ぐらいの感じで今後もできないかなと思っています。ですから今が折り返しです。人生50で折り返したら、100までそんなに元気でいられません。でも、シドニーから考えるとまだ12年。あと12年頑張って62歳です。スタイルは変わっていくと思うのですが、まだトップスポーツの指導者としては半分の道のりであると考えたいと思っているのです。

・・いろいろな選手に接していくことで、指導者は選手以上に進化できるのでは?
平井 対象がどんどん変わっていきますからね。寺川(綾)、萩野(公介)、山口(観弘)…。自分を変えるきっかけというのは選手が作ってくれています。

・・平井コーチは選手の個性に応じた指導法で結果を出してきたという形でクローズアップされることが多いのですが、個性を見抜くためのコツというのはあるのでしょうか。
平井 選手に踏み込むことが大切だと思います。選手の個性を見抜くのは観測データを取ることとは違います。こちらが知りたいと思ってないと知ることができないのです。

例えば自分の子供の性格がわからない親って、あまりいないと思うのです。こちらから知ろうと思ったら、時間をかけて、距離感を測りながら踏み込んでいく。私ですと選手と年齢が離れていて、50歳と18歳とか、30以上違うような選手になります。

でも、「俺が50歳だから、俺のレベルまで来なければ教えないよ」なんてやってると、たぶん個性は把握できないと思います。こちらから選手との距離感を近づけていく努力が必要だと思います。

・・これほど名伯楽になってなお、そういうお考えなのですね。
平井 お医者さんみたいに、今までの選手のパターンで言うと、こいつはこういうパターンだなというように、臨床経験は増えているのですが、だからといって、それで片づけてしまうといけない。やはり、踏み込んでいかないとダメだと思います。時間と情熱をかけるというのが一番だと思います。

・・踏み込む労力と情熱が必要になる。
平井 そうです。だからめんどくさくなることも、たくさんあるんですよ。結局、労力を惜しむなというのが、元々にあるわけですよ。東京スイミングに受け継がれてきた伝統というのも、私の中にはあります。

平井伯昌氏・・コーチングの最大の魅力はどのようなところにありますか?
平井 もちろん成果が出ることはすごく好きなのですが、どうやったら伸ばせられるかとか、どうやったら上手くいくかと考えることが好きですね。一生懸命やって、上手くいった時に達成感を感じることが好きです。

例えば今、山口観弘という世界記録出した選手を指導しているのですが、こうなっています(成績が振るわない)。私はそれが悔しいのです。それまでも山口を指導してきたので、世界記録を出すための一部を担ってきたのに、今は低迷している。

そこで自分に対して思うのは『お前、プライドないのか』ということです。平泳ぎで北島康介に金メダルを取らせて、世界記録も出させて、今度は山口に世界記録出させてきたのに、今の状態はなんだと思うわけですよ。だからもっと奮起しろと自分に思っています。
どのようにしたら今の悪い状態を直せるかを考えて、夜も寝れなくなる。自問自答の連続なんですよ。そういうことを考えると、『俺ってコーチが好きなんだな』と思いますね。

・・今後は東洋大を舞台にした、新たな展開をお考えということですが?
平井 例えば山口とか萩野が大学を卒業しても、彼らは現役を続けると思います。ですから、やはり環境整備をしてあげなきゃいけないという思いが当然あります。

今、自分の所に社会人の選手がいるので、それが今後のための良いモデルケースになると思います。選手の本当のピークは、社会人になってから。ですから、そういう環境を作るとことを模索しています。コーチというのは、コーチングだけしていればいいのではなく、マネジメントもしていかなきゃいけないというのが、今までの経験の中での結論。それを大学の組織としてどういうことができるかを考えています。これが現場での成績以外の目標ですね。

・・チーム平井は今、多くのトップスイマーを指導しています。
平井 私1人での指導でしたら少数精鋭になります。けれども今の目標は金メダルを取ること。金を取りつつ、例えば何人オリンピック選手出せるか、何人メダリスト出せるかということを考え、皆でやっています。

・・振り返ると始まりは北島選手でした。
平井 北島をアテネ五輪まで指導していた時は、1人の選手が一つの結果出すためのプロジェクトの連続でした。それが通用したのは北京五輪ぐらいまで。そこで一旦その取組みを終えて、また次のステップを踏んでいます。

言い方が難しいですが、今年は成績よりも4年後のためのステップの年。以前なら成績を上げることが環境を膨らますことだったのですが、その課程はもう済んでいる。だから、例えば萩野と山口には、大学一年生の間にちゃんと単位取りなさいと言っています。22歳より26歳の方が良くなるようにしたいと思えば、きちんと勉強することが必要なのです。

それと私はすでに金メダリストのコーチなので、条件に応じたアプローチの仕方というものを計算しながらやっています。7月には世界選手権があります。そこに向けて精一杯取り組みます。

(取材/構成=矢内由美子)