「同郷のスケーター」 Photo 能登直

 

羽生選手との最初の出会いは2007年に仙台で開催された全日本ジュニアの大会。僕の地元でもある仙台のローカルニュースで目にして、その存在自体は以前から知っていた。

その後も何度か撮影する機会を得ながら、同郷のスケーターを追い続けていた。
そんな中起きた2011年の大震災。
7階にある事務所で作業してた僕も一瞬「もうだめかも」と思う程の揺れ。沿岸部ほど被害は大きくなかったものの、仙台の街中でも日常が戻るまでは多くの時間を要した。

「スケートを続けてる場合なのか」と苦悩したという彼。
震災から約1ヶ月後に開催された神戸でのチャリティーアイスショー。これをきっかけに続けてくれたらと思いながら撮影した、あたたかいショーだった。

その後もこちらの予想のはるか上を行くスピードで成長を続け、練習拠点をカナダに移してからの活躍ぶりは周知の通り。
その中でも初めて撮影パスをいただいて取材したソチ五輪での活躍は、約1ヶ月の長丁場を乗り切る活力となった。
金メダルを手にしたセレモニーの後、取材ゾーンでがっちりと握手をしながら「これを持って仙台に帰りますから」という言葉に痺れた。

今夏、練習拠点のカナダのリンクで久々にゆっくり話す機会があった。メダリストになっても何も変わらない、いつもの「結弦くん」だったことが嬉しかった。
4年後を見据え更なる進化をめざす彼を、これからもカメラを通して追い続けたいと思う。

<著者・撮影者紹介>

能登 直(のと すなお)

1976年宮城県仙台市生まれ。大学卒業後、仙台のスタジオ勤務を経て、2005年に独立。人物撮影を中心とした広告写真やスポーツ写真など幅広く日々撮影中。2007年日本代表チームイタリア合宿の同行撮影したのがきっかけで、フィギュアスケートに魅せられ、ソチ五輪・世界選手権・全日本選手権・GPシリーズなど国内外で撮影し現在に至る。著書にまもなく刊行される羽生結弦写真集『YUZURU』、安藤美姫写真集『My Way』(いずれも集英社)がある。