カメラグランプリ 特別選考委員が見た新製品2025-2026 / Vol.4 SONY FE 50-150mm F2 GM(2025年5月発売) 初めての焦点域でまだ見ぬシーンに挑むことの重要性

1.最初に

常日頃「スポーツほど、被写体と撮影者の位置関係が自由にならない被写体は珍しい」と感じている人は多いと思うが、一方で今現在発売されているレンズのスペックも、見渡してみれば各社似通った数値となっているのも事実だ。これはおそらく、長年の経験を元に割り出された黃金値のようなものがあり、それから大きく外れないことがビジネス上の成功につながるからかと感じているのだが、アスリートとフォトグラファーの距離関係も変わりつつある今、今までになかった焦点距離が持つ意味を積極的に解釈し、取り入れていくことが新しい映像の発見につながることを痛感する。それだけに昨年、ソニーからこのレンズの製品化が発表されたときの驚きは今でも鮮明に覚えている。

このレンズには手ブレ補正機構が内蔵されていないため、ほかのGマスター望遠レンズと比べるとスイッチ類が少なく、レンズ側面を見ると外観がすっきりしていることがわかる

2.言い訳をしない焦点域、そして開放絞り値

長いこと定番レンズとしてカメラバッグの中を占有してきた標準ズームレンズ(大体の場合、24-70mm F2.8クラス)を使ってきて感じていたにもかかわらず、撮り手的にあきらめていたのは標準から望遠側の画角だった。長い間、F2.8遠しのズームレンズがスタンダードという世界を何の疑いもなく受け入れてきたため、単焦点レンズで勝負している他ジャンルの写真(ポートレートやマクロ撮影など)と比べてやや平面的な描写となることは、スポーツというジャンルにとって「不都合な真実」だった。「F2.8の呪縛」と言っても過言ではない状況に一石を投じたのが、実はソニーであることに気付いた人は少ないかもしれない。2024年12月に発売されたFE 28-70mm F2 GMがそのレンズなのだが、とあるきっかけでこのレンズのパフォーマンスを知ることになった私は「開放絞りF2で望遠側をカバーするレンズがあればいいけど、売れるか売れないのかもわからないレンズは製品化されないだろう」と思ったのだった。しかし現実は違った。このレンズはあらゆるジャンルのフォトグラファーに影響を与えることを強く予感する。

三脚座は取り外し可能となっており、取り外すことでより軽快に使うことができる。質量的にも1,340gと70-200mmクラスの望遠ズームレンズに近い重量を実現しているのがうれしい

3.この焦点距離がもたらす新たな可能性

いわゆる標準ズームレンズ(24mmから70mm程度)と望遠ズームレンズ(70mmから200mm程度)のレンズで絵作りを賄うことに慣れきった人間にとって、50-150mmという焦点距離、そして開放F値2という数値は、今までになかった絵柄がEVFに現れることで混乱するのではないかと心配したのだが、実際に絵を見て痛感したのは「今までの当たり前から解放されることのすばらしさ」だった。わずかひと絞り、されどひと絞りの違いがここまで大きいとは想像もしていなかっただけに、絞り開放の絵が得られる快感と、シャープな絵の両立は今までになかった世界だ。

ソニーα1 II + FE 50-150mm F2 GM(150mm) F4, 1/1600秒 ISO3200
フィギュアスケートの撮影で、バックスケーティングしながら回転を始める姿を捉える。カメラのリアルタイム認識AF+が有効に働き、スケーターの顔と胴体を的確に認識することで精度の高い合焦を実現していることがわかる

4.見逃すことのできない、ファームウェアアップデートによるトラッキング性能の向上

ちなみにこのレンズ、外観はGマスター望遠系レンズと同じく、筐体は白色仕上げだが大きく異なるポイントが二つある。それは「テレコンバーターが使えない」ことと、レンズ内に手ブレ補正機構が搭載されていないため、この機能についてはカメラ側に装備された手ブレ補正機構に依存することだ。ちなみに試用期間中、α1 II、α9 III、α7 Vの三機種で動体撮影を行ったのだが、私が使っている範囲では、ほかの手ブレ補正機構内蔵レンズと比べて決定的に困る場面はなかった。そしてα1 II、α9 IIIの2機種はファームウェアVer.4.00で搭載された「リアルタイム認識AF+」のおかげで、被写体認識精度が向上したことも、このレンズを使いこなす上で有利に働いていることを実感した。

ソニーα7 V + FE 50-150mm F2 GM(150mm) F4, 1/500秒 ISO800
雅楽の演目「蘭陵王」の舞いを劇場最後部から狙う。演者に良い角度で光が当たる瞬間は僅かしかないため、ひたすらその時を待つのだが、ミラーレス一眼ならではのサイレント性能を活かすことでその瞬間を捉えることができた

5.悩ましい重量制限とその回避手段

美点の多いレンズだが、悩ましい点もある。それはフィルター径が95mmという大口径(フィルターをレンズ前面に装着するタイプ)であることと、質量が1,340g(三脚座を取り外した場合)あるため、持込荷物の重量・個数制限が厳しいフライト(国際線やLCC搭乗時)の場合、取捨選択のジャッジをしなければならないことだ。回避するためにはバックまで含めた重量を規制値以内に収めるなどの工夫が必要になる。外形寸法も決して「小さい」とは言えないサイズなので、このレンズを本格的に活用しようと思ったら運搬手段(カメラバッグの選択)を良く考えた方が良さそうだ。

ソニーα7 V + FE 50-150mm F2 GM(150mm) 絞りF2 1/3200秒 ISO320
早朝の川面に向かって飛び立つユリカモメ。羽ばたく瞬間を狙ったところ、羽根に力が入る瞬間を捉えることができた

6.まとめ

「ただのズームレンズではない。複数の単焦点レンズをまとめたらこのカタチになった」という関係者のコメントを初めて聞いたときは「えっ?」と思ったが、実際に撮ってみて腑に落ちた。これは久しくなかった感覚だった。おいそれと買えるお値段ではないものの、もしこの焦点域をカバーする単焦点レンズを揃えることを考えると、プライスカードも荒唐無稽な数字ではないように思えるから不思議だ。なにより、いままで避けていたこの焦点距離で新しい写真がこれからたくさん生まれるのかと思うとワクワクしてくる。焦点距離について悩んだ経験がある人はぜひ、このレンズに触れてみてほしい。

(写真・文 :小城崇史/カメラグランプリ2026特別選考委員/AJPSフォトグラファー)

<協力>

ソニーマーケティング株式会社(レンズ・カメラ)

今瀬ひより(フィギュアスケート・MFフィギュアスケートアカデミー)

いちひめ雅楽会(雅楽公演)