1.最初に
レンズ交換式デジタルカメラが我々プロユーザーの世界に登場した約四半世紀前、一体何画素になればフィルムの代替となるのかを大真面目に議論していた時期があった。今やスマホのカメラでも4,800万画素のカメラを内蔵するのが当たり前となった現代から見たら、その頃は「えっ?」と言いたくなるような画素数のカメラがビックリするようなお値段で売られていたのだが(300万画素にも満たないカメラが650,000円というお値段だった)、もしもタイムマシンがあってあの時代にこのカメラを持っていったら、きっと誰もが信用しないであろうスペックを持つのがこのカメラだ。画素数競争もひと段落した中、1億200万画素のこのカメラが持つ意味はどこにあるのか、触れてみて感じたことを解き明かしていこう。

2.レンズ交換なし、単焦点という潔い割り切り
大多数のレンズ交換式デジタルカメラが5,000万画素程度を上限とするラインアップで構成される中、一社だけ1億200万画素のシリーズを展開する富士フイルムは毎年新機種を投入してくるが、今期登場したこのカメラは、レンズ交換はない代わりにマルチフォーマット対応+デジタルテレコンを装備することであらゆるニーズに応えようとしている。もっともこれらを切り替えることで、センサーをフルに使えなくなるというデメリットもあるので、今回は「1億200万画素を堪能する」ことに主眼を置いて撮影を続けた。1億200万画素をもしフィルムに置き換えたとしたら8×10以上のサイズ相当の画質になると思われるのだが、このカメラはどんなパフォーマンスを見せてくれるのだろうか。

3.精緻に作り込まれたボディに見る、メーカーの本気
メニューとファンクションボタンの組み合わせであらゆる操作を行うように設定された他社のカメラとは異なり、主立った操作にダイヤルを割り当てていることに最初は戸惑ったが、使い続ける内に慣れてしまうから不思議だ。それはメーカーがこのカメラを操ることについて真摯に取り組み、適切な操作系を実現していることの証左でもある。ダイヤルの操作感もしっかりとしたクリック感、アルミ削り出し由来の金属感が心地よく、そして程良い重量感(バッテリー、メモリーカード装着時約735g)がこのカメラで撮るよろこびを形作っているように感じる。

4.1億200万画素であることを忘れる使い心地
手ブレやピンボケに悩まされた経験を持つと、高画素機に対してどうしても懐疑的な感情を抱くのは致し方ないことだ。これは昔も今も決定的な解決策は限られるのだが、GFXシリーズのカメラを使うといつも感じるのは、それをカメラが上手に受け止めてくれるので、撮影に集中しているとそのこと(手ブレ・ピンボケ)を忘れてさせてくれることだ。そしてフィルムメーカーとしてのメリットを強く感じるのが、メニューに用意されたフィルムシミュレーションだ。同社のカメラではおなじみとなった機能だが、フィルム時代と決定的に異なるのは、ISO感度の設定をさして気にしなくても良くなったことだ。RAW画像をレタッチソフトでコントロールするのもいいが、フィルムシミュレーションで最適解を探すのも、写真の楽しみ方としてはありだと思う。

アスペクト比4 : 3の画面に設定し、青空に向かって咲く桜の花を狙う。絞りを開放F4に設定したことで、画面中央の花びら以外はアウトフォーカスとなっているが、高画素と美しいボケ感がマッチすることで、春の日の空気感を描写することができた
5.高画素機に望むこと
フィルムの時代、高画質を得ようとするとフォーマットの大きさを確保することは必須条件であり、35mmフィルムを中心とする一眼レフカメラの描写も最終的には「ブローニーやシートフィルムで撮ったものにはかなわない」とされた時代があった。その時期に「ならば、ブローニーフォーマットのカメラでスポーツを撮ろう」と取り組んだ先達がAJPSにいて、スキーのワールドカップをハッセルブラッド500CM(スウェーデン製のレンズシャッター式ブローニー判カメラ)で撮影した写真を拝見したことがあるのだが、機構上、一枚しか撮れない(つまり、ワンチャンスで決めなければアウト)その瞬間がスクエアな構図に凝縮されている様を見ることで「決定的瞬間」ってやはり、狙わないと撮れないんだなということを思い知らされた。今回残念ながら試用期間中にスポーツの現場がなかったが、それだけのポテンシャルがこのカメラにあることは疑いようがない。これは近い将来の課題として取っておくつもりだ。

僅かな羽音にカメラを向けると、そこにあったのは菜の花の蜜を吸う蜂の姿だった。都会の真ん中にある公園での一コマだが、周囲の喧噪を忘れさせてくれる春の情景に心がなごんだ
6.まとめ
21世紀の始まりと共に普及が始まったデジタルカメラも早四半世紀が過ぎ、そしてスマートホンの爆発的な普及で高画素の撮影データが当たり前に流通する時代となった今、写真描写に求められるものも変わりつつあることを痛感する。「高画質な写真」のニーズに応える上で、このメーカーが続けている「高画素+フィルムシミュレーション」が描き出す世界のひとつに、スポーツというジャンルがあってほしいし、自分自身もチャレンジしたいという気持ちを抱いた10日間だった。
(写真・文 :小城崇史/カメラグランプリ2026特別選考委員/AJPSフォトグラファー)
<協力>
富士フイルムイメージングシステムズ株式会社(カメラ)
