スーパースターは当たり前じゃない

子供の頃からスポーツを見るのが好きだった。
いろんなスーパースターがメディアを賑わすのを見てきた。スーパースターは活躍するのが当たり前、勝手にそんなイメージを持ってきた。

柔道界を牽引する阿部一二三。
圧倒的な主役感、誰もが思い描くスーパースター。
東京五輪・パリ五輪では期待に応え金メダルを獲得。その華々しさを世間に見せつけた。

撮影する立場で見てきた彼のキャリアは決して順調ではなかった。
彼が国際大会に出場するようになってから、常に海外選手からの厳しくマークを受けてきた。得意の投げ技を徹底的に警戒され、まともに組み合うことも難しい試合も多い。そんな中でも自身をアップデートし、苦しみながらも勝ち上がってきた。

五輪代表レースでは丸山城志郎というライバルを相手に勝ち負けを繰り返してきた。
東京五輪代表が危ぶまれる時期もあったが、逆転で代表権を勝ち取った。

しかし本番の大舞台ではそれをおくびにも出さず、主役として畳に上がる。
そして主役として金メダルを獲得。
このインパクトが強すぎて、いつも勝っているものと思わされてしまう。
これこそが子供の頃から見てきたスーパースターの条件なのかもしれない。

かねてから公言している目標「五輪3連覇」
海外選手からの警戒はさらに強くなり、2025年の世界選手権では黒星を喫した。
そして同門パーク24の後輩・武岡毅がライバルとして名乗り出た。
パーク24柔道部を応援してきた自分には複雑ではあるが、戦いの先にまたアップデートされた阿部一二三が見られるのが楽しみでもある。

いつも撮影の時は彼が勝つ前提でプランを立てる。
どんなに苦しい展開になっても、必ず勝ってくれると信じてシャッターチャンスを待つ。
スーパースターを撮影できる幸運を噛み締めながら。

 

小川 和行(おがわ かずゆき)/フォトグラファー

1979年生まれ。大学卒業後会社員を経てから、日本写真芸術専門学校卒業。2012年にフォート・キシモト入社後、さまざまなスポーツ現場を経験。中でもパラスポーツと柔道に興味を持ち、フリーランスになってからもそれらを取材の中心に据えて活動している。