カメラグランプリ特別選考委員が見た新製品2025-2026 / Vol.1 キヤノンEOS R6 Mark III(2025年11月発売) 「フルサイズミラーレスはスポーツの夢を見るか?」

1.最初に

我々の現場でもレンズ交換式ミラーレスカメラが当たり前になって、どれだけの時間が経過しただろうか。いまだに新しいテクノロジーを信用しない人間も多い世界だが、メーカーの製品開発がミラーレス中心となってからすでに相当の時間が経過していることを考えると、そろそろミラーレスカメラを主体にしたシステムを考えなければいけない時期に来ていることは確かだし、これからスポーツを撮りたいと思う人が使えるカメラが、いま世の中にどれだけあるのかを発信していくのも、このジャンルに携わる人間の務めだと思う今日この頃である。

2.EOSの「6」は誰のために?

今回発表されたこのカメラ・EOS R6 Mark IIIが、2012年に登場したEOS 6Dを起源とする、フルサイズレンズ交換式カメラのエントリー機の流れにあると捉えるならば、価格帯的には5シリーズより安価でありつつも、エントリークラスでありながらEOSのAF性能を体感させてくれる機種という位置付けなのだろう。そこで今回は、新機能や前機種からの改良点などのチェックは他の方にお任せして「スポーツを撮る立場」から見たこのカメラの印象について触れてみたい。

EOS R6 Mark IIIのメインスイッチ部。大型で手袋をしていても動かすことが可能だ

3.スペックだけではわからない「現場力」

新製品が発表されると大多数の人が胸躍り、様々な思いを膨らませるのが製品のスペックだろう。そして表面上の数値はすばらしいけれど、実際に使ってみると「カメラのバッファメモリーが埋まってしまうと動かなくなる」「AFのポテンシャルが常に同じではない」など「こんなはずじゃなかった」となるのが世の常だ。それだけに、実機を手にして試写すると、事前情報だけではわからないプロダクトの姿が見えてくる。

選考作業のためにお借りした機材の一部

4.大きく進化した「EVFの表現力」(OVFビューアシスト)

R6 Mark IIIを実際に使ってみて痛感したのは「EVFの見え方が自然で美しい」ことだ。こう書くと「見映え優先の盛った映像が出てくるのか?」と思われるかもしれないが、そういう意味ではない。自分の眼で見た姿とEVF上の映像に違和感が無く、シャッターを切る前の段階で「どんな画像になるのか」がイメージしやすいのだ。2018年に発売されたEOS R以降、数多くの製品が発売されているが、キヤノンとしては27機種目となるこのカメラは、初期の製品とは全く違うファインダーの表現力を有していることに感動を覚えた。これは同社が培ってきたHDR画像処理技術により、コントラストが高いシーンでも黒つぶれや白トビの少ない自然な見えを実現しているからだ。「OVFビューアシスト」とメーカーでは名付けているが、今までミラーレスカメラを拒んできた人にこそ体験してほしい機能だ。

後ろ方向に動きながら弧を描くスケーターの動きを狙う。AFの追尾動作が安定しているため、スケーターの顔に正確に合焦していることがわかる
EOS R6Mark III, RF 70-200mm F2.8 L IS USM Z(200mm), 1/1250, F2.8, ISO1600

5.カメラのクラスを超越した「SERVO AF」

カメラの連写性能とAFの合焦精度については、メーカーによってその考え方や出来栄えに差異が出る部分でもある。一眼レフ時代に異次元の性能を持つ動体予測AFを作りあげたキヤノンも、ミラーレスになってからは同社が思い描く理想の実現に苦闘している様子を感じていたが、EOS R1・R5 Mark II(2024年発売)からは同社本来のポテンシャルを発揮するようになり、今回のR6 Mark IIIも期待に違わぬ性能を確認することができた。詳細については写真ごとのキャプションをご参照いただきたい。

審査員席前を高速で後ろに向かって滑る姿を狙う。激しく動く中でも顔にきちんと合焦し、左腕・右腕は被写界深度外に出ていることがわかる
EOS R6Mark III, RF 70-200mm F2.8 L IS USM Z(200mm), 1/1250, F2.8, ISO1600

6.このカメラがもたらしてくれた気付き

秒間15コマ相当に設定し、フィギュアスケートという移動速度が極めて早い被写体で高速連写を行った際の合焦率が極めて高く、正直言って驚きを隠せなかった。黎明期のミラーレスカメラが動体撮影を全く考慮しておらず、スポーツ撮影というジャンルを完全に無視されたと感じていた期間が長かっただけに、これから写真を始める人が「スポーツを撮りたい」と思ったとき、このカメラならその入口になってくれることを確信した。

2倍エクステンダーを使い、カメラ席から遠い場所でスケーターが回転する姿を狙う。人物の顔検出が有効に働きスケーターを正確に捉えているほか、エクステンダー装着でも画質の低下はほとんど判別できない
EOS R6Mark III, RF 70-200mm F2.8 L IS USM Z + EXTENDER RF2x(310mm), F5.6, 1/1250, F5.6, ISO8000

7.むすび

私が携わるスポーツ撮影というジャンルは、写真業界はもとより写真愛好家全体から見ても少数派であり、ともすれば忘れられがちな存在でもある。しかし確実にニーズがあり、そしてまだ見ぬ一枚を得るための技術革新に大きな期待を抱いているジャンルでもある。そう遠くない将来「ボクはこのカメラでスポーツ写真を撮り始めました」という若手に出会えたらという期待をしてしまう、そんな可能性を感じた一台である。

 

(写真・文 :小城崇史/カメラグランプリ2026特別選考委員/AJPSフォトグラファー)

<参考>

カメラグランプリのレギュレーション

・主催はカメラ記者クラブ。カメラ雑誌・カメラ情報Web媒体によって構成される

・毎年度4月1日から3月31日までに、日本国内で発売されたカメラ・レンズの中からカメラ記者クラブが選んだ製品について選考委員が選考を行い、投票結果に応じてその年度のグランプリが決定される。今回は2025年4月1日から2026年3月31日までに発売された製品が対象

・選考委員はカメラ記者クラブ加盟媒体が推挙した外部選考委員(約20名)と各媒体の代表者(約10名)に加え、カメラ記者クラブが委嘱した外部有識者を中心とした特別選考委員(約10名)で構成される

・選考委員による投票以外に、一般ユーザーからの投票によって決まる「あなたが選んだベストカメラ・ベストレンズ賞」も同時進行で開催される

・投票は毎年4月初旬に行われ、5月中旬に結果発表、6月1日(写真の日)に表彰式が行われる。最多票を獲得した製品は「大賞」として表彰され、選考結果については結果発表時に全ての選考委員の投票内容及び講評と共に公開される。

<協力>

キヤノンマーケティングジャパン株式会社(機材)

今瀬ひより/MFフィギュアスケートアカデミー(フィギュアスケート)