カメラグランプリ 特別選考委員が見た新製品2025-2026 / Vol.3 SIGMA 200mm F2 DG OS Sports(2025年9月発売)「我が道を行くMade In Aizuとスポーツの関係」

1.最初に

絶えず被写体が動き続け、決定的瞬間がいつどのように訪れるかは誰にもわからない。それがスポーツの魅力であり、そしてそれは写真として定着させる上で絶えることのない苦難の連続でもある。それだけに「スポーツ撮影に強い適性を持つ」製品を持つことはカメラメーカーにとっても格好の販促材料となるようで、明らかにその分野における性能向上を図った製品を開発し市場に投入し、各社間で競うことが半世紀以上にわたって続いている。しかしユーザーの大多数はスポーツとは無関係の被写体を追いかけているのも事実で、高価格化を製品のスポーツ対応にあると考え「高価格化の元凶」と唱える人が多かったのも事実だ。そのためか、いつしかメーカーも「スポーツに強い」ことを声高に言わなくなってきたように感じるのだが、そんな中、製品名に「Sports」を冠する製品を作りますとあるメーカーが宣言したときは、私は腰を抜かさんばかりに驚いた。2012年、ケルンメッセ(ドイツ)で開催された見本市でそれを宣言したのが、熱狂的なユーザーから世界的支持を得るようになったシグマ(本社:神奈川県川崎市)である。製造業の海外進出が世の趨勢となる中、福島県磐梯町に所在する自社工場での一貫生産体制を貫く同社は、2025年より「Made In Aizu」を標榜することで更に個性的な製品をリリースするようになったが、そのSportsライン最新の製品となるのが、今回テストする200mm F2 DG OS Sportsである。

フィルターは前面装着式で105mmとなっている

2.ズームレンズの限界、単焦点レンズの可能性

スポーツ撮影の現場は常に制約と限界のせめぎ合いだ。近年は感染症対策等も考慮されるようになり、被写体と撮影者の位置関係には必ず何らかの制約が存在する。国際大会になると、テレビとスチールの間での位置関係の整理が大会主催側の業務として存在するほどであり、そんな中、スチールフォトグラファーはより迫力ある画を撮るために超望遠レンズを多用するようになった。近年は「開放F値固定の超望遠ズームレンズ」が定番となり、皆示し合わせたように200-400mmクラスのレンズが現場に並ぶ光景も当たり前のようになってきた。但しズームレンズの性能的限界なのか、開放F値が4で止まることを嫌って単焦点レンズを使い続けるフォトグラファーも依然として多い。現状、400mmまでは開放F値2.8のレンズが存在し、ズームレンズにはない解像感やボケ描写が得られることを考えると、この混沌とした状況はこれからも続くのかもしれない。

スイッチ類は全て左側面に集中し配置されている

3.今までのミラーレスレンズにはなかった「200mm F2」

ちなみに単焦点レンズには画角を調整する機能は備わっていないため、単焦点レンズでスポーツを撮ろうとすると「被写体との位置調整」は全て撮り手の側に委ねられる。しかし開放絞り値によって実現されるボケ感を求めて様々なレンズが作られてきたのも事実で、スポーツ撮影を想定して作られたと思われる200mm F2のスペックを持つレンズが一眼レフの時代には数本、存在している。しかしほとんどの会社が製品開発の軸足をミラーレスカメラに移行した今、このスペックを持つレンズは作られていない。実際に私も、他社でこのスペックを持つレンズが発売された際に製品レビューを依頼され、大絶賛する記事を書いたのだが、自分の撮影ジャンルや経済的状況を理由に買わなかったことを今も後悔している。それだけに、ミラーレスでは初となるこのレンズの発売に期待するところは大きい。

リンクを滑るスケーターを追い続け、上半身が一番大きくなる箇所でシャッターを切る。後方のボケ感は今までになかった世界だ
SONYα1 II, SIGMA 200mm F2 DG OS|Sports, 1/500, F2, ISO320

4.開放絞りF2の実現で得られるもの

超望遠レンズを多用することから、開放F値が2.8から4のレンズで得られるボケ感が大多数となるスポーツ写真だが、カメラのAF性能が大きく向上し、絞り開放でも動体に対する正確な合焦が得られるようになった今「絞り値F2の世界」がもたらす世界は今までになかったものだ。実際に撮影してみて感じたのは、スポーツ撮影におけるボケ感は、ポートレートや花・風景などと活かし方が異なるということだ。しかし今まで得ることができなかった描写を手に入れることは、新たな表現の可能性を手に入れることでもある。そういった選択肢が増えることはとても喜ばしいことだ。ただ近年、航空機への荷物持ち込み制限が厳しくなっている現実を考えると、装備重量の制限がある中でこのレンズを選ぶのか、置いていくのかは悩ましい問題かもしれない。

全身を収めるフレーミングで狙うと、カメラのAFは顔を狙って合焦するためこのレンズならではの遠近感がよく分かる
SONYα1 II , SIGMA 200mm F2 DG OS|Sports, 1/1600, F2, ISO1000

5.類似焦点域との違い

200mmといえば、スポーツフォトグラファーならまず1本は持っているであろう70-200mm F2.8のズームレンズが思い浮かぶ。絞り値にしてわずか1段の違いだが、この1段の違いが被写体の距離、被写体と背景の距離によって左右されるとは言え、試写をしていて感じたのはその違いが明確にわかる場面の方が多いということだった。メインで使うレンズはズームレンズだけど、自分だけの描写を求めて単焦点レンズを持つフォトグラファーは意外に多い。200mmでないと撮れない世界を求めるには格好のチャンスかもしれない。

ジャンプに入る直前の瞬間を捉える。今までの望遠レンズでは得られなかったボケ感描写はまるで映画のワンシーンのようだ
SONYα1 II , SIGMA 200mm F2 DG OS|Sports, 1/1600, F2, ISO640

6.性能面の制約について

このレンズに限らず、全てのシグマ製品(Eマウントレンズ)はソニーとの正式なライセンス契約に基づいて製作されているが、契約上いくつかの制約があることにも触れておきたい。具体的には「テレコンバーターレンズ非対応(物理的には結合できるが電気信号が通信されないため撮影できない)」と、AF対応速度が秒間15コマまでに制限されている。この制約を理由にシグマ製レンズを敬遠するユーザーも多いようだが、まだミラーレス専用レンズがなかった時代からマウントアダプターを使ってシグマ製レンズをソニーαカメラに取り付けて使ってきた私としては、さして不自由には感じていない。現状αの上位機種では秒間120コマ(α9 III)、30コマ(α1 II)の連続撮影機能が用意されているが、実際には15コマに設定して撮影していることがほとんどだからだ。ただ、この制約はいずれ解除されるのではないかという希望的観測を持っている。

早朝の第一京浜を駆ける駅伝走者の姿を追う。集団を引っ張る先頭のランナーを狙うことで、後方を走るランナーとの距離感を描写することができた
SONYα1 II , SIGMA 200mm F2 DG OS|Sports, 1/1600, F2.8, ISO1000

7.むすび

レンズの新製品は新たな表現の可能性を秘めているだけに、その登場は常に待ち遠しい。シグマの製品にはいつも新鮮な驚きと感動があるが、中でも「Sports」と銘打ったこのレンズには、久しくなかったスペックが今までのミラーレスレンズにはなかった世界を見せてくれただけに、そのよろこびもとても大きい。他社に先んじる製品化は同社の伝統でもあり、そして実際に、既存のカメラメーカーにはない製品が現実化することに夢を感じる。200mm F2という希有な存在を一度ぜひ試してほしい1本だ。

 

(写真・文 :小城崇史/カメラグランプリ2026特別選考委員/AJPSフォトグラファー)

<協力>

株式会社シグマ(機材)

今瀬ひより/MFフィギュアスケートアカデミー(フィギュアスケート)