「セパタクローが教えてくれたこと」 Photo 高須力

 

東南アジア発祥の足を使ったバレーボールのような競技、セパタクローとの出会いは10年以上前になる。真摯に競技に取り組む選手たちの姿を見て、一人でも多くの人に知ってもらいたいと思うようになり、雑誌で取り上げてもらおうと模索したけれど、自分の無力さを痛感する結果になった。今となってはそれもそのはずだと思う。なぜなら僕自身が1年に1回取材するかしないか、その程度しか取材をしていない人間の言うことに、誰が耳を傾けてくれるだろうか。

できるかできないか可能性を探る前に動け。要はやるかやらないかの話だ。

そのことを教えてくれたのは、他でもない選手たちだった。マイナースポーツゆえに大学を卒業すれば引退か、働きながら無理のない範囲で楽しむ選手がほとんどだ。長期の海外遠征を伴う代表の活動を続けることは、ある意味で人生を削る行為に等しい。それでも、彼らは直径13.5cmのプラスチック製のボールを蹴りながら、広報や普及にも力を注ぎ、家族を守り、生活のために働く。すべてはセパタクローのためだ。

その結果、渋谷のクラブでイベントを開催し、ユニフォームサプライヤーに出会い、地方にも協力者や、海外遠征に理解を示してくれる企業も増えた。そして、念願だったアジア大会では2大会連続の銅メダルを獲得した。残念ながらメダル獲得の効果は期待したほどではなかった…。

今日も彼らはプラスチック製のボールを蹴り、そして生活のために働いている。それでも10年前に比べれば、彼らの環境はほんの少しかも知れないけれど、確実に変わった。そのわずかな一歩の持つ意味は尊く重い。

という訳で、3年ほど前から世界選手権の取材を始め、タイのプロリーグにも行き、アジア大会でも撮影をした。その度に僕が「セパタクロー!!」と騒ぐものだから、最近では「セパタクロー頑張ってる?」なんて声をかけてもらるようになった。これだって本当に些細なことだけれど、大いなる前進だ、と思いたい。

「へ?」「だから何?」「面白そう」と思ったあなたは7月11日-12日、墨田区総合体育館へ。全日本セパタクローオープン選手権という大会がやっています。日本トップクラスの空中戦があなたを出迎えてくれます。

<著者・撮影者紹介>?高須力(たかすつとむ)

1978年、東京都出身。2002年より独学でスポーツ写真を始め、フリーランスとなる。サッカーを中心に様々な競技を撮影。ライフワークとしてセパタクロー日本代表を追いかけている。日本スポーツプレス協会、国際スポーツプレス協会会員。