カメラグランプリ 特別選考委員が見た新製品2025-2026 / Vol.5 TAMRON 35-100mm F/2.8 Di III VXD(2026年3月発売) 小型軽量かつ明るいズームで見える未来

1.最初に

アマチュア向けのスポーツ撮影ワークショップに出講するとよく聞かれるのが「カメラは最上位機種じゃないとダメですか?」「レンズはやはり、カメラメーカー純正じゃないとダメですか?」という二つの質問だ。会社が装備を揃えてくれる社員カメラマンの場合はそれがある意味理想ではあるが、だからといって「それでなければならない」ということではない。もちろん、上位機種や純正レンズが持つパフォーマンスは極めて高いレベルにあるのは事実だが、過去を紐解くと新しい変化が訪れるのはほとんどの場合、違うところから始まっている。それだけに意欲的な新製品を試すことのできるカメラグランプリの選考は私のような立場の人間にとってはまたとない機会でもあり、今回特にお願いしてご準備いただいたこのレンズも、大きな期待を抱かずにはいられないレンズの1本だ。

レンズの構造は極めてシンプル。スイッチ・ボタン類は左手の支配下に収まる位置に配置されている

2.使い手ファーストに作り込まれた小型軽量の筐体

普段大口径のレンズを振り回すことが常態化している私にとって、直径80.6mm、質量565g(ソニーEマウントの場合)のレンズは最初手にしたとき「大丈夫なのか?」と感じたのだが、その心配は杞憂であることにすぐにわかった。感心したのはズームリングの程良い固さだ。カメラを肩からぶら下げた状態で長時間持ち歩いても、ズームリングが勝手に動くことがないので手に取ってすぐ撮影に入ることができるのは、スペック表からは見えない美点だ。ズーミングしても筐体の繰り出し量が少ないので、重心移動が少なく快適に撮影を続けることができるのは動画撮影にも生かせそうだ。現状ではソニーEマウント、ニコンZマウントのレンズが発売されているが、それぞれの純正ラインアップと比較しても、同種のレンズはないだけにこのレンズの存在感が光る。

シンプルな表記。控え目に記されているのも好感が持てる。レンズフィルター径は最近としては小サイズとなった67mmだ

3.動体撮影においてこの焦点距離が持つ可能性

以前の選考メモにも書いた通り、24-70mmと70-200mmのズームレンズでカバーしていた焦点距離をこの新たな区切り(35-100mm)で捉えるとどうなるのか。大変残念なことに試用期間中スポーツ取材がなかったためほかの被写体での試写となったのだが、撮っていて感じたのはこの焦点距離の気持ちよさだった。無理に広角画角を詰め込んでいないこと、70mmよりも少し先のアングルが見せてくれる、言葉にできない気持ちよさがこんなに心地良いとは意外だった。9枚の絞り羽根が見せてくれる美しいボケも、その気持ちよさにつながっている印象を受けた。

ソニーα7 V + TAMRON 35-100mm F/2.8Di III VXD (100mm) F2.8, 1/6400, ISO320
水面がきらめく時間帯、川を下る遊覧船をテラスから狙う。カメラの被写体認識機能に助けられ、正確に合焦していることがわかる。絞り開放のためわずかな周辺光量落ちが認められるが特に気にはならず、レンズの内面反射も最小限に抑えられていることがわかる

4.サードパーティー製であることを感じさせない使い心地

選考メモVol.3でも記した通り、このレンズもソニーとの正式なライセンス契約に基づいて製造されるため、テレコンバーターが使えない、連写速度が制限される(秒間15コマまで)などの制約が存在するが、試写をしていて決定的に困ったことはなかった。むしろ筐体全体が小型軽量を強く意識して作られていることで、気軽に持ち歩けることのメリットを痛感した。メーカーでは「ポケットレンズ」というフレーズでプロモーションしているようだが、カメラのバッテリーグリップを取り外した状態でこのレンズを取り付けると、そのコンパクトぶりを体感することができた。

ソニーα7 V + TAMRON 35-100mm F/2.8Di III VXD (100mm) F2.8, 1/1000, ISO1250
大型商業施設の展望エリアから逆光で差し込む太陽の光を狙う。強化ガラス越し、そして構造物のすき間からさし込む光という厳しい条件だが、レンズの内面反射を極限まで抑え込んでいることがわかる

5.残念なポイント

これは小型軽量にまとめたレンズの宿命かもしれないが、このレンズはワイド側とテレ側で最短撮影距離が大きく異なり、100mm側での最短撮影距離はやや長く感じられる(0.65m)のが残念と言えば残念なポイントだ。ただ、もしがんばって最短撮影距離を縮めてその見返りにレンズの軽快さが失われたら元も子もないので、接写をしたいときは同社の90mmマクロを使ってくださいということなのかもしれない。ちなみにこのレンズのフィルター径は67mmとなっているが、この口径のレンズを持っていない場合は新たに用意するか、角形フィルターにするなどの対策が必要になる。フィルターワークをしたい人にとってはちょっと悩ましい点かもしれない。

ソニーα7 V + TAMRON 35-100mm F/2.8Di III VXD (100mm) F2.8, 1/5000, ISO640
自分的にはもう少し寄ってフレーミングしたかったシーンの一例。あと少し寄ることで背景のボケがさらに強調されたら嬉しかった場面だ。ボケ自体はとても美しい

6.まとめ

先日私が出講したワークショップでは、受講者様優先でレンズを配分した結果、私のところにはかなり短い焦点距離のレンズしか回ってこなかったのだが、いたずらに長い焦点距離のレンズばかりでなく、違う焦点距離のレンズを手にした時どうするか?を考える機会となった。最近は、今までなかった焦点距離のレンズが続々登場するようになった印象を受けるが、それはレンズ交換式カメラでないと撮れない、新しい世界が広がることを意味する。せっかくの機会だ。みなさんも是非手に取って、小型軽量のこのレンズが見せてくれる世界を体験してみてほしい。

ソニーα7 V + TAMRON 35-100mm F/2.8Di III VXD (70mm) F5.6, 1/500, ISO6400
京都の春を告げる行事のひとつ、雅楽の定期演奏会のワンシーン。厳しい照明条件だが、レンズとカメラのポテンシャルをフルに発揮することで、厳かな中に垣間見える雅な瞬間を捉えることができた

(写真・文 :小城崇史/カメラグランプリ2026特別選考委員/AJPSフォトグラファー)

<協力>

株式会社タムロン(レンズ)

ソニーマーケティング株式会社(カメラ)

いちひめ雅楽会(雅楽公演)