「ワールドカップ アルピンスキー最終戦 サンモリッツ2015-16レポート」 Text 畠山喜代子/Hatakeyama Kiyoko

今季の最終戦は通年のカレンダー、翌年2017年の世界選手権大会を控えたスイスのSt Moritzで開催された。 復活祭の連休を前に天候は悪くなかったし、ワールドカップの支持者、選手たちの家族、ファングループはスイスのみならず、オーストリア、ドイツ、イタリア、フランス、北欧からもやって来た。
3月16日、最終戦の第1日は通年同様、種目滑降の各男女で現ランキング25位までとジュニア世界の優勝者で競われた。 今季は長い負傷からの復帰した選手の忍耐と努力という個人的な戦いの表れをみることができた?と思う。                                    この日の滑降の勝利は怪我から復帰したベアト フォイツ(SUI)で男子滑降の種目総合優勝者は予想外のペーター フィル(ITA)で、自分はなんでもやる、なんの種目でもエントリーすると常々言っていたが、33歳で長年の滑降の総合勝利は初めての事、人々は驚愕し、本人は大歓喜した。
女子はスイスの今期大躍進、ララ グート、2週間前に負傷で休場した女王リンシー ボン(USA)のあとを引き続き勝ち抜いて既に総合優勝を決めその勢いで、最終戦も2位のチナ バイライター(LIE)に0.5秒タイム差でスーパーGの勝利を挙げた。 ララ グートは若くして骨盤骨折という重症を負い、1シーズンを完全に治療で休んだ経験ももつが、昨年からトップの成績をあげ、今期はフル活動でワールドカップの総合優勝をはじめて獲得した。 前回のスイス女子総合優勝、フレニー シュナイダー以来21年ぶりのことである。

最終戦滑降第9戦トップ3位
女子
1.ミリアム プヒナー(AUT)  2.ファ ビエンヌ スッター(SUI) 3.エレナ クルトー(ITA)
男子
1.ベアト フォイツ(SUI)  2.ステーブン ナイマン(USA) 3.エーリック ゲ(CAN)

種目滑降総合優勝
女子                           男子
1.リンチー ボン(USA) 580 ポイント      1.ペーター フイル(ITA) 462 ポイント
2. ファビエンヌ スッター (SUI) 463      2.アクセル ルンド スヴィンダル(NOR) ?436
3.ラリサ ユルキヴ(CAN) 407        3.ドミニク パリス(ITA) 432
第2日目の3月17日、最終戦のプログラムは通年同様、種目スーパーGである。 標高2640メートルのスタート地点は春の太陽が輝き、それでもコースは固くしまり選手たちの望むところ、観衆も昨日よりはるかに上回った。 だが、女子はともかく男子のコースセットはいわゆる意をつく落とし穴が潜み、23人中の8人が旗門不通過の失敗をやってしまった。 今季、種目スーパーGは完全にノールウェーの手中にあり、ケイチル ヤンスルードと、アレキサンダー アーモット キルドによって勝利を決められていたが、最終戦のこの日は快調のベアト フォイツ(SUI)が優勝を決め、ノールウェーの2人は共に2位でフォイツ(SUI)を祝福する立場にまわった。

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最終戦スーパーG 女子第8戦トップ3
1.チナ ヴァイライター(LIE) 2.ララ グート(SUI) 3.コルネリア フッター(AUT)

スーパーG 男子第8戦 トップ3
1.ベアト フォイツ(SUI)  2.アレキサンダーA キルデ(NOR)、 2.ケイチル ヤンスルード(NOR)

種目スーパーG総合優勝
女子                       男子
1.ララ グート(SUI) 481ポイント    1.アレキサンダー アーモット キルデ(NOR) 415
2.チナ バイライター(LIE) 436      2.ケイチル ヤンスルード(NOR) 375
3.リンチー ボン(USA) 420      3.アクセル スヴィンダル(NOR) 310

・ 世界選手権2017への滑降のエース、ベアト フォイツ(SUI)の長いトンネル

「最終戦の滑降にはラストの2人目でスタートする事ができたんだ。 自分の体自身が優勝できた事を喜び、それでうまくいっているんだ」と前回より1476日後に再び表彰台の中央にたったフォイツは言った。 別名をクーゲル、弾丸とも呼ばれる、 身長172cm、80kgは欧米では小柄なほうだがその固められた体躯はスピードを持つ弾丸であり、以前のスイス男子チームのコーチであったカール フレスナー氏は?「彼はスピードのステンマルクだ。 彼は同様にどんな雪面にも即座に正確に対応出来る選手だからな。」と、話したことがある。 ベアトは幼少時からシーズンの終わりになっても雪だまりを見つけて滑りまくっていたほど、スキーが大好きな子供であった。 スイススキーチームに所属し、ジュニア世界のタイトルを持ってワールドカップ最終戦に出場、ワールドカップに出場するようになり、高速系で成績も挙げたが、シーズン2012年の相次ぐ大けが、右足アキレス腱、膝靭帯大破損、担当の医師らは下腿の切断さえ考えたそうだが、姑息的な手術と長期のレハビリテイションを続けて次のシーズンには雪上に立つことも可能になった。 今季最終戦の滑降は優勝し、スーパーGは種目総合の12位。 来期2017年世界選手権大会のここのコースはベアト フォイツにどんな結果をもたらすことになるだろうか。
第3日、3月16日は慣例のチームイベント、各国の男女混合の4名によるパラレルスラローム、地元のスイスチームが優勝した。
第4日,第5日はテクニック種目、早朝、8時30分からレース開始で女子大回転、男子回転の1本目、2時間後にはその2本目が行われ、最終日は女子回転、男子大回転が行われる。これは通年の同様なプログラムである。

第4日、3月17日

第11戦女子回転トップ3               第11戦男子大回転トップ3
1.ミカエラ シフリン(USA)           1.トーマス ファナラ(FRA)
2.ヴェロニカ ヴェレツ ツツロヴァ(SVK)      2.アレックス パンチュラオー(FRA)
3.フリーダ ハンスドッター(SWE)         3.マッチュー フェブレ (FRA)

種目女子回転総合優勝               種目男子大回転総合優勝
1.フリーダ ハンスドッター(SWE) ?711ポイント   1.マルセル ヒルシャー(AUT) ?766ポイント
2.ヴェレツ ツツロヴァV(SVK) 626         2.アレクシス パンチュラオー(FRA) ?690
3.ヴェンデイ ホールデナー(SUI) ?561       3.ヘンリック クリストフエルセン(NOR) ?487
最終日 3月18日

第11戦女子大回転トップ3              第11戦男子回転トップ3

1.ヴィクトリア ?ーゲンスブルグ(GER)        1.アンドレ ミーラー(SWE)
2.タ二ア バリオ(FRA)              2.マルセル ヒルシャー(AUT)
3.ララ グート(SUI)                3.フォースソレバーグ(NOR)

種目大回転女子総合                 種目回転男子総合
1.エヴァ マリア ブレーム(AUT) ?592ポイント   1.ヘンリック クリストフエルセン(NOR) ?811
2.ヴィクトリア レーゲンスブルグ(AUT) ?590     2.マルセル ヒルシャー(AUT) 780
3.ララ グート(SUI) ?472             3.フェリッス ノイロイター(GER) 389

ワールドカップ総合優勝2015-16年
女子総合                         男子総合
1.ララ グート(SUI)??1462ポイント      1.マルセル ヒルシャー(AUT) 1795ポイント
2.リンシー ボン(USA) 1235          2.ヘンリック クリストフエルセン(NOR) ?1298
3.ヴィクトリア レーゲンスブルグ(GER) ?1047     3.アレクシイ パンチュラオー(FRA) ?1200

Wcup2015,16総合優勝

総合優勝優勝者2015-2016年

マルセル ヒルシャー(AUT) 今季マドンナ デ カンオイリオ、スラロームレース中の事故、コース上を飛ドローンがヒルシャーめがけて落下、一瞬ポールを通過していたヒルシャー自身は「物音は聞いた,加倒したポールがぶつかり合う音かと感じた」と述べたが、それはめづらしく厳し表情でもあった。 総合優勝の大トロフイは5年連続、これはスキー大国オーストリアの著名な選手たち、 カール シュランツ、 トニー ザイラー, フランツ クランマー、ヘルマン マイヤー達の中に加わる現役中のレース成績である。 高速系種目が不得意?なのではなく、自身は力を持っていてもあえてエントリーする必要がないからであろう。 マルセルのオフは彼の大型バイクの手入れに余念なく、山岳、峠、時速制限への追求に余念がないのだ。

ララ グート(SUI) 「今シーズンの私の目標は種目スーパーGの優勝トロフイを獲得ということだったので、総合優勝は夢みたいです。 厳しかったけど素晴らしいシーズンでした。 私を支援してくださった皆さんに大変感謝しています。 来期、ここでの世界選手権 それは私に出来るベストなレースをやるということでです。」


雑感、ゴール記者コーナーその他
最近のジャーナリスト、いわゆるペンはスタートリストとメモを持ってゴールに待機するのはごく少数である。 多くは小型のビデオカメラとマイクロフォンを持って自国の選手、コーチとのインタビューをおこなう。 選手、コーチ、マテリアルのスポンサー、いわゆる広大なチームコーナーの中には開催国のテレビ取材班とユーロスポーツ社がマイクロフォンを持って飛び回り、大観衆との雰囲気を盛り上げていた。 我々はゴールの大スクリーンを見ていればスタートからゴールをつぶさに観戦可能、聞き耳を立ててスタートリストにメモをとる、これを私のいつもの仕事である。
メインプレスセンター、ホテルーヌ ヴィクトリアの大講堂には音声のない大テレビが2台設置されて、壇上には勝利者へのインタビューがセットされていたが、ここでの記者会見は今回は全く実施されなかった。
ゴールのサブプレスセンターは狭く30人ほどのカメラ、ペンで満席、飲食コーナーはプレスのみでなく、警備その他の業務員と共用で時間的には非常に混雑、水とサンドイッチをもらって外に飛び出した。 会場のゴール周辺は通常はスキーピステの一部、駐車場はなく,St Moritz Badのメインプレスセンター、ホテルーヌ ヴィクトリアからゴールへは常時プレスシャトルバスで約15分程
で会場に運ばれる。 オンコースカメラはスキーでスタート地点へリフトで上がるのだが、今回リフト券はオンコースカメラのみでゴールのカメラは自前で購入した。 これまでに多くの世界選手権大会ではエントリーしたプレス、ペンであっても大会スキー場及び周辺のリフト券が配布されたが、今回ワールドカップの最終戦ではIDにリフト利用の番号はなかった。
今回の組織委員会はほとんどが来年の世界選手権大会に同等の任務にを担当する。 メディアにはそのプロモーションのためのパーティーもあったが時間的に夜遅く参加しなかった。
来年2月6日から19日、FIS Alpine World Ski Championships St.Moritz 2017のPRは今回も盛んに行われているが、今日現在の状況では取材に便利で、てごろな料金の宿泊施設はサンモリッツバードも、ドルフのいずれとも組織委員会によってすでに予約されていた。 例えばスイスなどの大チームは4星ホテルをまるごと予約,我々の毎年のように利用するレストランを持つ3つ星ホテルは警備隊と警察関係のために全室予約されていて、別館の夏休みの中学生が合宿する2段ベットでシャワートイレは共同といったユースホステル?のような部分はまだいくつかのベットの空きがあるという。 前回2003年の世界選手権大会の時はツーリストインフォメーションをとうして個人のアパートを借りた。2週間は高額だったが会場に通うのもスーパーでの買い物ををするのも便利でし取材活動ををすることができた。


<著者紹介>
畠山喜代子/はたけやまきよこ
東京出身、1971年よりスイスで公務員の仕事につく傍ら、取材活動を始めたのは1987年、スキーアルピン、ノルディックを主体に自転車競技、山岳マラソン等、を各スキー誌、新聞(内外)に発表。あるワールドカップスキーアルピンのイタリアでのレースのあと、アルベルト.トンバのファンは言った「トンバは勝った、こんな困難な仕事を果たしたんだ。凄い、そう思う。さあ、明日は自分も仕事(自動車整備工)に精を出さなきゃ」 スポーツの感激を誰にでも浸透させたい、常々そう思っています。